ダブワンな人々。#3「お願い! チョコレート!」

いつもと変わらない昼下がり。
あまのやの縁側でくつろいでいたトトのもとに
「にーちゃー!」という大きな声が聞こえてきました。

登場人物

エバンナ
異世界の少女。トトの幼馴染。彼に対する想いは複雑。
トト
エバンナの友達。純真無垢。彼女に対する想いは単純。
竹井瑠衣(たけいるい)
「あまのや」の宿泊客。「俺」の通う大学の助教。

不真面目な大学生。
単位欲しさに瑠衣の仕事の助手を務めている。

ポッケ
トトの義妹。
風のように現れ風のように去る、潔いまでの脇役。

 

 

 

 

 

#3
「お願い!チョコレート!」
さく・ナカオボウシ

 

 

 

 

 

ポッケ
にーちゃ!
プレゼントさしあげます!

 

トト
えっ、どうしたの?

 

ポッケ
今この時はオトメが最愛のトノガタに
愛の心を添えてチョコレートを
プレゼントする日
なんだって!

 

ポッケ
これをセケンでは
バレタなんとかデーというらしい!
そう、真子が言っていた!

 

トト
……。
……ええっと……
↑突然のことで頭がついていかない

 

トト
つまりオトメのポッケ
最愛のトノガタのぼくに、愛の心を添えて
チョコレートをプレゼントしてくれた
……ってことかなぁ?

 

ポッケ
そのとーり!
コレすごく美味しかったゾ!
真子が分けてくれたけど!

 

トト
そうかぁ……
ありがとうね、ポッケ
一緒に食べようか

 

ポッケ
うん!!

 

 

円奈にお茶を出してもらって、
居間でチョコレートをついばむ二人。

「おいしいね」などと談笑するところに、
エバンナが通りかかりました。

 

 

エバンナ
……まーた
変わった物を食べてるわねぇ

茶色い板みたい

 

トト
チョコレートって言うんだよ
エバンナも食べてごらんよ

 

エバンナ
……あ、おいしい
思ってたよりも甘いのね
あたしはどら焼きの方が好きだけど

 

お、チョコレートじゃん
やるねぇ~トトっち! エバンナちゃんから?

 

トト
ううん
ポッケがプレゼントしてくれたんだよ

作ったのは真子だけど

 

ポッケちゅわ~ん
敬愛する異世界の兄こと俺にチョコは~?

 

ポッケ
やらんよ
…ひとかけらもな

 

つれないなぁ~
エバンナちゃんは流石にくれますよねぇ?

黒猫キーホルダー買ってあげたこと忘れてませんよねー?
↑こういうところが嫌われる

 

エバンナ
…今ひとつ分からないんだけど
この世界ではこのチョコレートを
人に贈る習慣でもあるの?

 

瑠衣
バレンタインデー」と呼ばれる
今日に限ってのことだがな

 

瑠衣
今日は女性が男性に
チョコレートを贈る日なんだよ

……ほれ、チョコに飢えた
可愛い教え子にプレゼントだ

駅前で配ってた

 

わーいブ○ックサンダーだぁ!
一目で義理と分かるヤツだぁ~!

 

エバンナ
……くだらない習慣ねぇ
意味のあることとは思えないわ

 

瑠衣
そうとも限らんよ
少なくとも身近な異性との距離感を
確認し合う機会にはなるだろう

 

エバンナ
まぁ、確かに……今のやり取りを見ていて
瑠衣が異性としてアイツに興味がないことを
何となく理解できたわ

 

いーや! ブ〇ックサンダー程度には
愛されてると理解してください!

来年にはこれをゴデ○バに変えてみせましょう!

 

瑠衣
ま…そういうことだな
ゴデ○バを渡すことは永遠に無いが

 

エバンナ
……

 

トトとポッケが食べていたチョコが無くなると、

そこにいたみんなは自然とその場から離れていきました。

自室に向かおうとする瑠衣に、エバンナが声をかけます。

 

エバンナ
ねぇ瑠衣
さっきのチョコレートだけど……

 

瑠衣
うん?

 

エバンナ
エキマエって、ここから遠いの?

 

瑠衣
……
本来は、手作りのチョコを
渡すのが一番なんだぞ?

 

エバンナ
あたし、作り方わからないし……
それに……

 

瑠衣
それに?

 

エバンナ
……
「本気出してる」とか
思われたらムカつくし……

 

瑠衣
……

 

瑠衣
ふっ……

 

エバンナ
なんで笑うのっ!

 

瑠衣
いやいや、すまん
ちょっと若い頃を思い出してしまった

青春って素敵

 

瑠衣
…お詫びといってはなんだが
車を出してあげるよ

ここから駅までは距離があるからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ザッザッザ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エバンナ
気分が悪いわ……

 

瑠衣
運転中に下ばかり見ているとそうなるんだ
帰りは気をつけなさい

 

エバンナ
……そういう問題なのかしら……
円奈の車に乗った時と比べて
ずいぶん身の危険を感じたけど……

※瑠衣は運転が下手なんです! 詳しくは本編Lv.1を読んでね!

 

 

そんな話をしながら、駅前を歩く二人。

田舎町とは言えそれなりに人通りがある商店街の一角に、
瑠衣がチョコをもらったという電気屋がありました。

 

 

瑠衣
……

 

電気屋さんの前では「バレンタイン応援隊!」と書かれた
たすきを掛けたチアガールのコスプレをした女性の姿がありました。

既に撤収をし始めている様子で、瑠衣が通りがかった時には
沢山あった籠の中身はもう空っぽのようでした。

 

キャンペーンガール
ごめんなさ~い!
ちょっと前に終わっちゃったんですよ~

 

瑠衣
ま、予想はしていたがな
さてどうするか……

 

エバンナ
予備の分は?
これから補充してまた配らない?

 

キャンペーンガール
うちはこれで終わりですね~
客入りピークも過ぎましたし~

 

瑠衣
ああ、そうだ……
確かモール街の方に
チョコレートの専門店があったはずだよ

 

瑠衣
シーズン中だから
バレンタインチョコも取り扱っているだろう

今からそこに寄って――

 

エバンナ
……買うのはイヤ

 

瑠衣
え? どうして?

 

エバンナ
だって……
あたし、お金持ってないもん

瑠衣にお金を出してもらわなきゃ
いけなくなるでしょ?

 

瑠衣
代金を支払うことは構わない……が
問題はそんなことじゃない、よな?

 

エバンナ
うん……
作るにしろ貰うにしろ
「あたしが手にしたもの」を渡したいの……

 

エバンナ
そうじゃなきゃ
なんか、違う気がするから……

うまく説明できないんだけど……

 

瑠衣
……
いや、分かるよエバンナ

 

キャンペーンガール
もうめっちゃ分かる~~っ!!

 

 

 

 

 

 

キャンペーンガール
誰かから買ってもらったチョコなんか
絶~対! 渡したくないよね!

すんごい分かるよお嬢ちゃんっ!!
お姉さんも中学んとき、似たような経験した!

 

キャンペーンガール
しかもお金がないからって
ウチなんかのチンケなチョコを
渡すつもりだったなんてさぁあ……
もー不憫すぎてさー……
お姉さん涙が出てくるよぉー……

 

瑠衣
(……いいのか、そういうこと言って)

 

エバンナ
……この店と同じように
チョコを配っているお店はないかしら?

 

キャンペーンガール
あるにはあるけど……
時間的にどこも終わってると思うよ?
ウチも捌けたの遅かったぐらいだから

本部からの連絡によると

 

エバンナ
そう……

 

キャンペーンガール
でもご安心!
この商店街では今、町内会主催の
福引抽選会をやっている真っ最中!

 

キャンペーンガール
その5等賞が正に、
この時期に合わせたチョコレート詰め合わせセットなのでーす!!

別名「古い在庫の寄せ集め」!

 

 

 

 

瑠衣
福引か……
当たるかどうかは分からないが
やってみる価値はあるかもな

エバンナがチョコを手に出来る、最後のチャンスかも…

 

エバンナ
ありがとう! 早速行ってみるわ
場所を教えて頂戴

 

キャンペーンガール
ノンノンノン!
福引所に行ったところで
福引券が無いとクジは
引けないんだよ~!?

 

キャンペーンガール
でも大丈夫!
我が電気店がビシッ
お嬢ちゃんの恋をサポートしちゃうから!

 

キャンペーンガール
ウチでは福引対象商品を
多数取り揃えてるからね!
しかも他店に比べてウチは激安!!
この状況で福引対象商品を買わないなんて
人間じゃないと思うなー、お姉さんは!

 

キャンペーンガール
ほうよね!?
メガネのお姉さん!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電気店にて買い物を強いられた瑠衣は、
やむなく単一の乾電池4本パックを大量に購入。

電気屋の店員から手渡された福引券12枚を手に、
二人は町内会の福引会場に足を踏み入れました。

 

 

エバンナ
ごめんなさい
余計な買い物させちゃって……

 

瑠衣
必要な買い物さ
単一電池は仕事でよく使うからな

…もう数年は買わずに済みそうだが

 

 

エバンナと瑠衣は、
改めて交換所にある景品一覧を覗きました。

 

 

 

 

 

エバンナ
もらった福引券は12枚……
ということは12回、抽選を引き当てる
チャンスがあるということよね?

 

瑠衣
うん
当選確率はそう低くないはずだよ

 

エバンナ
これをクルクル回せばいいのよね……
いくわよ……

 

瑠衣
うん 頑張りなさい

 

エバンナ
ふうっ……!

 

 

 

ガラガラガラガラ……!

 

 

 

 

 

 

カランカランカランカラ~~~ン!!

 

 

 

 

おじさん
おめでとうございま~す!!

 

エバンナ
何っ!?
チョコレート!?

 

おじさん
いやいや、6等!
ポケットティッシュ3個入りが当たりました~

これで突然鼻水が出た時も安心ね~!

 

エバンナ
……
それのどこがおめでたいってのよ……!

 

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
特等大阪USOペアチケット~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

おじさん
おめでとうございま~す!
6等ポケットティッシュ3個入り~

 

 

 

 

 

クズばっかりじゃないッ!!

 

 

 

 

エバンナ
これが最後の一枚ね……

 

瑠衣
ここまで連続して
ポケットティッシュを引いたんだ……

次は無いと祈りたい……

 

エバンナ
……いくわよ

 

 

 

――ぐるぐるぐる

 

 

 

エバンナ
きて……
チョコレート……!

 

 

 

エバンナ
お願いよ……

 

 

 

 

 

エバンナ
お願い……
チョコレート……ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――数時間後。
「あまのや」居間にて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トト
どうしたの、エバンナ?
瑠衣さんが、用があるみたいだよって

 

エバンナ
べっ……別に……
大した用じゃないけど……

 

トト
その大きな箱は、なぁに?

 

 

エバンナ
ん……これは……

 

エバンナ
あの……

 

エバンナ
あ……あんたに……

 

トト
ぼくに?

 

トト
なんだろう……
開けてもいい?

 

エバンナ
……
…べ、別にいいけど…?

 

トト
わぁ……
チョコレートが、こんなに……

 

エバンナ
……

 

 

 

 

トト
そうか……
2月14日は、バレンタインデーだから……

 

エバンナ
……

 

 

 

 

トト
ええっと……
オトメが、最愛のトノガタに……
↑やっぱり頭がついていかない

 

エバンナ
……

 

 

 

 

トト
愛の心を添えて……
チョコレートを贈る日だから……

 

 

 

 

 

トト
つまりオトメのエバンナ
最愛のトノガタのぼくに、愛の心を添えて
チョコレートをプレゼントしてくれた
……ってことかなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トト
……そうなんだよね? エバンナ?
ぼく、間違ってないよね?

 

 

 

 

 

 

 

トト
ねぇ、エバンナ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エバンナ
……誰が……

 

エバンナ
あんたに……
あげるなんて言った……?

 

トト
え? でも、さっき……
あんたにって……

 

エバンナ
あんたに食べて
もらいたかっただけよっ!

 

トト
え……

 

エバンナ
これはあたしのチョコレートなの!
瑠衣と買い物に行った時、たまたま
福引で当たっちゃったのよっ!

 

エバンナ
さっき食べたチョコが
美味しかったからねぇ
とっても嬉しいわっ!

当然あたしも食べるわよ!

 

エバンナ
でも全部は食べきれない!!
だからあんたを呼んできてって
瑠衣に頼んだだけじゃないッ!

 

エバンナ
ねぇ!? 頼むから
変な勘違いしないでくれる!?

…言いふらされたりでもしたら
すっごい迷惑だからッ!!

 

トト
あ…うう……
ごめんね、エバンナ……
ぼくは……てっきり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの二人……
これから進展するんすかねぇ……

 

瑠衣
まぁ……トトにチョコを
食べてもらえるわけだから
一歩前進ということに……
なるかな……?

 

そうですねー
かなり強引に解釈すりゃー

 

瑠衣
ふぅ……
君、私から追加でプレゼントだ
受け取りなさい

ポケットティッシュ3個入り×10

 

竹井さぁん……
そりゃちょ~っと酷くねーっすかぁ……?

女性からバレンタインに大量のティッシュを頂く…
これが意味するものをどーか深読みして頂きたい…

 

瑠衣
……分かったよ
オマケも付けよう

どうせ私もエバンナも興味がないものだ

 

USOーん!?
ゼータク過ぎるオマケktkr!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トト
もぐもぐ……

 

トト
あの、エバンナ……?

 

トト
こんなに一杯あるんだから
ポッケや円奈さん達も呼んで
みんなで食べない
……?
二人とも好きだから、きっと喜ぶよ

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい…?

 

 

 

 

 

 

 

 

よく 聞こえなかったんだけど…?

 

 

 

 

トト
あ………っ
ううん……な、なんでもないよ……

 

トト
もぐもぐ……
えっと…エバンナ……?

 

トト
……おいしいねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

…そうね…

 

 

 

 

 

 

 

 

…おいしいわね…

 

 

 

トト
あ……っ

 

トト
(……ううん……
ぼくは、どうしたらいいのかなぁ……)

 

相変わらずエバンナの気持ちが理解できずに、
困ってしまうトト。

妙な緊張感が漂う部屋の中で二人は
お腹が満腹になるのを感じがら、
静かにチョコレートを食べ続けるのでした……。

 

~おしまい~

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い! チョコレート!」

ダブワンな人々。」第三回は、「バレンタイン」をテーマにお届けいたしました。
ラブコメは好きなジャンルなので、色恋が絡む今回のお話は書いていてとても楽しかったです! いつか恋愛をメインにした作品も発表できたらいいですね。

バレンタインにまつわる個人的な思い出話については何もありません…
頑張って思い返してみたのですが、真面目に何も浮かんで来ません。頭を叩いて記憶を捻り出そうとしても、浮かぶのは「しんにょう」ってどういう意味だろうとかそんなことばかりです。恋愛経験が無いわけではありませんが、決して豊富ではないのでパッと浮かんで来ないんだと思います。

そんな僕がバレンタインに対して思うことは「流行により一般化した祝日」に関するところです。近頃ではハロウィンを祝う習慣が、日本でも定着しつつあるところですよね。

ハロウィンに関しては、自分の中で昔と比べてイメージに大きな変化が生じたと感じています。かつて自分が抱いていたハロウィンのイメージは、いま目に見えるイメージよりももっとホラーだったんですよ。当時ハロウィンのイメージを構築する情報といえば、僕の周りにはジョン・カーペンター監督の映画アーライぐらいしかなかったもので。かたやホラー映画、かたや「マーダラー(人殺し)」と叫ぶ感じのヘビメタバンドです。この2つしか情報が無いとなると、そりゃホラーな印象になりますよね。ハロウィンの印象をポップに変えたのは、「うみねこのなく頃に」が最初だったように思います。

ハロウィンの次は、何がイベントとして定着するんでしょうね。
そんな想像をすることが時々あります。感謝祭、聖パトリックの祝日、マルディグラ、等々。日本にはまだ定着していない祝い事は結構ありますよね。様々な異文化が日本でも親しまれ、結果みんながハッピーに過ごせる日が一日でも増えたら、素敵なことだなって思います。

個人的には、聖パトリックの祝日が流行ったらいいなと思います。
だって時期が過ぎた後、緑色のビールがセールになりそうだから! 辛党なので、このイベントに関しては僕も参加して楽しめそうな予感があります。笑

モテない僕にとって、バレンタインは縁が薄い行事です。笑
皆さんにとってはどうですか?

意中の人にチョコを渡せた女性や、逆に頂けた男性の方がもしいらっしゃったなら、僕もなんだか幸せな気持ちになっちゃいます。リア充爆発しろとはよく言ったものですが、僕はノロケ話を聞くのが嫌いじゃないんです。笑 幸せのお裾分けをしてもらえる感じがして良いです。人の不幸が蜜の味ならば、幸福もまた甘酸っぱくて素敵な味だと感じているのかもしれませんね。

今回のエピソードが、皆さんの2/14を少しでも楽しませるプレゼントとなっていたら。
僕にとってそれ以上に嬉しいことはありません。

ハッピーバレンタイン!

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