参考作品のこと
 W-Standard,Wonderland Lv.1を制作するにあたって、いくつか参考にした作品があります。Lv.1体験済プレイヤーの夕べとしてお届けする最初のコラムは、参考作品について書こうと思います。

 1.Back to the Future part 1(以下、映画のネタバレ注意)
   
 言わずと知れた名作映画。多くの皆さんにとってそうであるように、僕にとっても、今まで観てきた映画の中で五指に入る作品です。僕がバックトゥザフューチャー(以降BTTF)のどの要素を参考にしたかというと、それは読後感です。

 観たことがある方は、BTTFのシノプシスを思い返してみて下さい。
 不意の事故で過去へと遡ったマーティは、1955年に存在するタイムマシンの発明者ドクを頼り、現在の世界へと帰ろうとします。愛すべき悪役ビフの魔手から両親を救ったマーティは無事に、過去から現実へと戻ることに成功します。
 バック・トゥ・ザ・フュチャー(未来に帰る)…なるほど、それは過去から現実に戻る事なんだなぁ。などと思いながら充足感に浸っていると、マーティの庭先に轟音が鳴り響きます。今まで見てきたそれとは微妙に異なるデロリアンの中から出てきたのは、異様な風貌のドク…。

 「道? …そんな物は必要ないさ!」



 <テ〜テロテ〜テ〜テテテ〜(テーマソング



 まさに神映画。



 思い出しただけで鳥肌が立ちます。
 上映当時僕は生まれていないのでアレなんですが、映画館で見てたらスタンディングオベーションしかねませぬ…。盛大な拍手を送っている僕の脳裏には(マーティ達がどこへ向かったか)(今度はどんな冒険を体験するのか)という妄想が蝕むものの、そこに漠としたモヤモヤ感は発生しません。『過去から現実に帰る物語』を味わい尽くしたその時、脳裏に浮かぶ感情は『また、こんな凄いのを味わえるんだ!(幸せすぎる)』という、ポジティブな感情一色です。

 Lv.1は、そういう読後感を目指しました。
 これ単体でもお金を頂戴するものですから、『ずっと伏せてた、あの謎について遂に伝えるぜ。……Lv2でな!(まさに外道』みたいな内容にするのはなんだかフェアじゃないと思ったのです。これはこれで楽しめるアトラクションがあって、感情が上下する展開があって。見終った後に拍手を送ることが出来るような、1つの『ショー』となるように意識しました。現在頂いている感想を拝見させて頂く限り、モヤモヤ感を残すような内容になっていないと分かり、今の所は安心しております。

 ちなみにBTTFは、part1発表当時続編を作る予定はなかったらしいですね(故にあの終わり方に対し、続きを望む声が殺到したのだとか)つまりあのオチは意図的に続編を匂わせたのではなく、そういうジョークだったというわけです。個人的にpart2(part3と制作同時進行)の終わらせ方よりpart1の終わらせ方のほうが好きなのは、脚本に意図的な要因が感じられないからなのかな…なんて、今でもシリーズを見返しては考えます。

 2.となりのトトロ

 
 「だ〜れか来たんけ〜」というお婆さんの台詞が(個人的に)印象深い、トトロでございます。これもまた、BTTFと同じく遠因となる参考作品となります。その要素は深読みです。
 トトロの都市伝説と言えば有名な話ですよね。
 映画後半からサツキとメイに影が無くなるとか、池に落ちていたサンダルはメイのものとか。故に、映画後半で二人は既に死んでいるらしい……。
 「ヒエ〜」となりますよね(僕はなりました)あの田舎を舞台にしたほんわかファンタジーに、実は、そんな裏の意図があったなんて…!と。
 
 実際のところ、この噂は正式に否定されています。影もサンダルもあくまで偶然。トトロという作品はほんわかファンタジーで、それ以上でも以下もないというわけです。

 でも、僕は思うのです。たとえ制作者から噂が否定されても、トトロの都市伝説を聴いて感じた「ひぇ〜」という感情それ自体には価値があると。一連の都市伝説を聴いて僕らが抱いた感情。これもまた、1つのエンターテインメントと認知されるべきものと思うのです。

 「意味が分かると○○な話」なんてコンテンツと似てますね。こういう要因を、ダブワンLv.1の中には意図的に篭めてあります。
 分かりやすい例は、パーラーターゲットで初めて顔を合わせたトト&エバンナと大女将さんのシーン。帰り際、大女将はトトに「早くエバンナを追ってやり」と言います。しかしトトもエバンナも、大女将のいるところでは一度も『エバンナ』の名を口に出していません。なぜ大女将は『エバンナ』の名前を口に出来たのでしょうか。
 「ヒエ〜」……とはなりませんね。GEAR「昭和63年、夏」を読めば。

 上記の例にどのぐらいの方が気付いたかは分かりませんが、仮に気付かなかった場合、大女将とエバンナの関係性は『榎波を軸にして、以後何らかのやり取りがある』といった印象に留まると思います。
 それも誤った方向性ではありません。ですが、気付けた場合は上記の印象に『大女将は榎波から聴いた子の名前を覚えている』という事実が加えられます。従って、あのシーンの女将の態度をもとにした考察を現状でも展開出来るのです。
 深みが増すとはこういう部分です。

 MYTHで多く頂いた「意味が分からない」というご感想を踏まえ、大枠の謎は比較的簡単に解ける仕組みにしたつもりです。憶測を挟むこともありません。整理すれば解けます。ですから、MYTHよりはその辺ちゃんとしたゲーム(という名のコンテンツ)になっているはずです。

 しかしそれだけとなると、自分の作風にしてはイージーかなと思いました。
 ゆえに『意味が分かると深みが増す要素』の項目で腕を振るいました。気付いてくれなくても読み物としては成立しますが、気付いたら出来事や人物への深みが増します。
 皆さんもお暇な時に探してみてください。些細な台詞や地の文の中で、考えると意味合いが変わってくるものを。


 3.Siren
 
 PS2のホラーゲーム。この作品で参考にした要素は、2の項目でも言及しました、思考遊戯(パズルゲーム)の要素です。
 この作品は要約すると異界の地と化した山村から脱出することを目的としたゲームです。副次的な情報なく話を進めていくと、当然、目的達成という事で登場人物が村から脱出する事に成功します。しかし副次的な情報がないと、途中から意味不明な展開になってくると思います。
 副次的に得られる情報。Sirenという物語は、これを生かした作品だと自分は思っています。パーッと進め(られるような難易度でもありませんが)ていくだけでは理解できないけれど、副読物。『アーカイブ』を確認すれば大凡の内容を理解する事が出来る。
 自分がsirenをプレイして、手にしたアーカイブとストーリーパートを照らし合わせている時に抱いた感覚こそが、思考遊戯(パズルゲーム)でした。ぷよぷよした物体を落とすこともなければ、自殺ネズミを出口に誘導することもなく、文章“だけで”パズルゲームをしているという感情に包まれました。
 ダブワンを作るにあたって、このストーリーにどのようなジャンルのゲームを当てはめようかと考えた際、Sirenのことが頭に浮かびました。この作品が用語集や、GEARの要素を組み込む発想の原点となったのです。

2015.09.04 ナカオボウシ

知ってた
気付かなかった


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